インドネシアを含む東南アジアには、ヨーロッパ人の要塞を除けば、あまり堅固な城郭はありません。しかしインドネシア東部のスラウェシ島の属島であるブトン島には、たくさんの城跡が残っています。珊瑚石で築かれた石垣は、まるで沖縄のグスクを思わせるものがあります。
16世紀以降この地域には、ブトン・イスラーム王国が力を持っていました。その本拠地が、ウォリオ城です。海峡を見下ろす急峻な崖の上に築かれたこの城には、大砲が残る数多くの堡塁があります。そして周囲には2個所の出城があり、少なくともインドネシアでは最も堅固な城跡であると言えます。
文献が少なくブトン王国については不明な点が多いですが、長年の城壁の修復に伴って膨大な陶磁片が現れています。
2004年から私たちは、ここで試掘と陶磁片整理を行っています。その結果、18世紀前半にはヨーロッパ向けの肥前磁器大壺が、大量にもたらされたことが分かりました。そしてウィーンにしか残っていない鯉滝登り文大壺の破片が、2005年の試掘で出土しています。
この城跡の謎の解明は、まだこれからになります。 |
鯉滝登り文大壺片 |